暗香不動
暗香不動
昭和46年(1971)
静涯山人92歳
満月の夜に咲く梅の花は必ず結実する
「暗香浮動」故事を好み多くの満月・梅・を描いた
古い梅木の枝に清楚に咲き乱れる梅の花
朦朧とした暗闇の中から
折しも満月の光が下界を照らし
幻想の世界・導かれる信念・闇をも輝らす
神秘的な光景を創造させて
林逋「千古の絶調」と称えられた漢詩を
細い筆で丁寧に書し
月光浴に身を置き
心洗われる浄化・手放し・解放
気持ちの落ち着きが欠けることのない
大きく丸い月の煌めく自然現象
日本人の心を描いた名品であり
晩年期の円熟した画風を感じさせる代表作
作:静涯結心
朦朧もうろう:霞む
:ぼんやり
:はっきりしない
折しも・折から:主に副詞
:ちょうどその時
神秘的=mysterious
不思議で測り知れない様
(理論・認識を超える・想像できない)
白梅の花言葉:上品・気品
英語の花言葉
keep your promise約束を守る
beauty and longevity 美と長寿
⚫︎暗香:どこからか漂ういい香り
:闇に漂う花の香
:梅の香り(多くの詩)
⚫︎不動:揺るぎない
:精神を乱さない
:不動明王の略
⚫︎浮動:ふわふわ漂うこと
不動明王(お不動様):インド神話の三大神の一人
:春の訪れを表す言葉
悪を絶ち仏道に導く役目から恐ろしいお顔の出立ちである
一切の災いを祓う力をもつ慈悲深い仏様
除災招福・病気平癒・身体健全・家内安全・国家安泰etc
平起こり七言律詩の形
『疎らな枝は清い流れの水に斜めに影を映し
ほのかな梅の香りが月昇る
黄昏時にどこからともなく漂ってくる』
暗香浮動
衆芳揺落独嬋妍 :衆芳揺落して独り嬋妍たり
さんえんしょうばいしゅうほうようらくしてひとりけん
占尽風情向小園 :小園にて風情を占め尽くす
ふうじょうをしめつくして しょうえんにむこう
疎影横斜水清浅 :疎影 横斜して 水清浅
そえいおうしゃ みずせいせん
暗香浮動月黄昏 :暗香 浮動して月 黄昏
あんこうふどう つきこうこん
霜禽欲下先偸眼:霜禽下らんと欲して先ず眼を偸む
そうきんくだらんとほっしてまずめをぬすみ
粉蝶如知合断魂:粉蝶如し知らば合に魂を断つべし
ふんちょうもししらばまさにこんをたつべし
幸有微吟可相狎 :幸に微吟の相い狎るべき有り
さいわいにびぎんのあいなるべきあり
不須檀板共金樽 :須いず 檀板と金樽とを
もちいずだんぱんときんそんをともにするを
衆芳:百花(多くの花)
嬋妍:艶やかで美しい
横斜:斜めにのびた枝
暗香:どこからともなく漂ってくる香り
霜禽:白い鳥(鳩)
粉蝶:白い蝶
微吟:小声で詩句を吟誦する
相狎:互いに慣れ親しむ
金樽:貴重なお酒
檀板金樽:世俗の人が好む音楽と酒宴
「疎影横斜水清淺暗香浮動月黄昏」は
「千古の絶調」と称えられている。
この詩が世に出て以後
林逋は詠梅の詩壇を独占することになる。
多くの花が散ってしまい
梅だけが艶やかに咲き誇り
庭の風情を占め尽くす
咲き初めて葉もまばらな枝の影を
清く浅い水の上に斜めに落ちて
月おぼろ黄昏時になると香りが
どことも知れずほのかに漂う
霜夜の小鳥が降り立とうとし
まずそっと流し目を向ける
白い蝶がもしこの花を知れば
魂を奪われてうっとりするに違いない
幸い私の小声の詩吟を
梅は好いてくれているから
いまさら歌舞音曲も宴会もいらない
àn xiāng fú dòng yuè huáng hūn
”暗香浮动月黄昏”
満月の夜ほのかに漂う梅の香り
暗香不動を初めて見た日
林逋(山園小梅)967-1028
中国北宋の詩人:錢塘せんとう=浙江省:杭州
西湖の孤山に梅300株を植え鶴を飼い20年間生活した。生涯官に仕えず妻帯しなかった。詩風は穏やかで書も書いた。詩は元来西湖の風景を詠じたものが多い。死後、和靖(わせい)と諡された。「林和靖詩集」全6巻の著がある。日本では江戸時代:1686年以降愛好された。中国では世俗から離れ山林のなかに隠れ住む人を尊ぶ伝統がある。隠士いんし・高士こうしと呼ばれる。有能で世間に出れば重んじられ大出世するはずなのにとらわれない生活をした。
梅の花言葉
上品・高潔・忍耐・忠実
不屈の精神
梅の花:薔薇科・桜属
这愿望让你听
貴方の願いを叶えてあげたい
我知道一切不容易
全て容易くないと知っている
我的心一直温习说服自己
私の心は繰り返し自分を説得している
只为能靠近你
あなたに近づく為には真的需要勇气
本当に勇気が必要で
来面对流言蜚语
色々な噂が飛び交っている
只要你也一样的肯定
あなたと合意できるのなら我的爱就有意义
私の思いは意義を持つ你的存在才是一切美好 使然
貴方の存在全てが素晴らしいから
〜 I will grant your wish 〜
福岡県世外荘に泊まり目が覚めた早朝
突然「暗香不動図」が私を誘い寄せた
私の目に止まったあの日から
結実へ向けての整理整頓が始まった。
奇跡は何度も度々訪れる
「*満月の夜に咲く梅の花は必ず結実する」
筆:平田榮治
*時を超えこの一節に刺激を受けました
筆:静涯結心
水墨画121.4×39cm
神武天皇